There's a Riot Goin' On
2018年夏のクン・ナリンズ・エレクトリック・ピン・バンドから約半年。3回目となる爆音映画祭のタイ|イサーン特集のライヴでは、再びアンカナーン・クンチャイさんを招聘する。『バンコクナイツ』でも観ることのできた彼女の姿はあまりに凛々しくて、われわれを一気に時間の果てへと連れ去る一直線の視線とともにあったと思う。われわれは今どこにいるのか、という問いが生まれる。この日本、この東京。あまりにばかげていて冗談ではないかと思うものの冗談ではないこの日本で生きるしかないわれわれの身体がかけがえのないこのひとつでしかない悲しみが、彼女の歌声とともに湧き上がる。その悲しみとともに怒りばかりが身体を責め立てるのだが、急がば回れ。彼女の歌声とともにこの東京からイサーンを経て世界の果てへと心と身体をゆっくりと広げてみる。いくつもの映像がわれわれの身体を貫き通すだろう。そして今回の上映はイサーンだけではないタイの各地、あるいは国境を越えてカンボジアへと広がる作品をラインナップした。その風景と歴史の中で、われわれは生きる。いつの日かこの東京のゆがんだ風景も、それらの中にゆっくりと飲み込まれていくだろう。笑えない冗談には、そんな果てしない未来からのほほえみを返すことにしよう。われわれは今、そんな微笑みの中にいるのだ。There's a Riot Goin' On樋口泰人(boid主宰/爆音上映&爆音映画祭プロデューサー)
アンカナーン・クンチャイ・パッタナー・バンド結成理由
タイ語で「パッタナー」という言葉がある。発展、開発するという意味でタイ音楽のアーティストやプロデューサーはよくこの言葉を使う。アンカナーン・クンチャイ、チャウィーワン・ダムヌーン、ダオ・バンドンなど数多くのイサーン歌手の作詞・作曲を手掛けた伝説のプロデューサー、スリン・パクシリは「ルークトゥンやモーラムも伝統を守ってばかりではいけない。常に新しい音楽を取り入れて発展させないと大衆の心は掴めないし、音楽は廃れてしまう」という。この言葉こそタイ音楽がラテン、ロック、ディスコからヒップホップまでに取り入れ、現在でもルークトゥンやモーラムを聞く文化が根付いている理由である。アンカナーン・クンチャイ・パッタナー・バンドでは貴重な正統派モーラムはもちろん、新しいモーラムのスタイルにもチャレンジしてもらう予定だ。「パッタナー」をするから音楽は常に面白く、廃れない。そのタイ音楽の肝を1月12日、WWWXで体感してもらいたい。Soi48(KEIICHI UTSUKI & SHINSUKE TAKAGI)
<主催>
boid、空族、Soi48