山梨に住むタイ人とブラジル人と日本人の現実を思いもよらぬ視線によって描き出した映画『サウダーヂ』から5年。その間 タイの地に拠点を移していた製作集団「空族」が、ついに新作を作り上げた。そこにはイサーンと呼ばれるタイの東北部のミ ュージシャンたちが出演しているという。タイの歴史のさまざまな闇をくぐり抜けてきた彼らの音楽は、過去と現在と未来と をひとつの音のうねりの中に巻き込んで、時間と空間をなきものにする。西洋の基準としての時間と空間を台無しにすると言 ったらいいか。そしてより親密でより過酷でより猥雑でより深い愛の物語を生み出していく。2016 年の爆音映画祭はそんな 音と映画を特集する。渋谷の街をイサーンの森の深い闇が覆う。その闇の中でわたしたちはいったい何と出会うだろうか。
樋口泰人(boid/爆音映画祭プロデューサー)
『バンコクナイツ』 Bangkok Nites (2016年/182分/富田克也)
前作『サウダーヂ』で、地方都市のリアルを「土方」「移民」「Hip Hop」をテーマに描き、話題となった映画制作集団、空族 の最新作。構想10年、舞台を山梨からタイに移し、空族が問うアジア「娼婦」「楽園」「植民地」が、元自衛隊員とバンコク の日本人向け歓楽街・タニヤ通りでホステスとして働くタイ人女性の交流を軸に描かれる。
http://www.bangkok-nites.asia/
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