山梨に住むタイ人とブラジル人と日本人の現実を思いもよらぬ視線によって描き出した映画『サウダーヂ』から5年。その間 タイの地に拠点を移していた製作集団「空族」が、ついに新作を作り上げた。そこにはイサーンと呼ばれるタイの東北部のミ ュージシャンたちが出演しているという。タイの歴史のさまざまな闇をくぐり抜けてきた彼らの音楽は、過去と現在と未来と をひとつの音のうねりの中に巻き込んで、時間と空間をなきものにする。西洋の基準としての時間と空間を台無しにすると言 ったらいいか。そしてより親密でより過酷でより猥雑でより深い愛の物語を生み出していく。2016 年の爆音映画祭はそんな 音と映画を特集する。渋谷の街をイサーンの森の深い闇が覆う。その闇の中でわたしたちはいったい何と出会うだろうか。 樋口泰人(boid/爆音映画祭プロデューサー)
アンカナーン&プロイ・クンチャイ ANGKANANG KUNCHAI & PLOY KUNCHAI
1956年生まれ。アムナートチャルーン県出身の女性モーラム歌手。チャウィーワン・ダムヌーンに師事。1972年スリン・パク シリによって制作され彼女が歌ったモーラムとポップスを結びつけた最初の曲「イサーン・ラム・プルーン」が大ヒット。「イ サーン・ラム・プルーン」は2014年にエム・レコードから再発されその独特の節回しと美しい声から全世界の音楽ファンを魅 了した。空族の映画『バンコクナイツ』にも出演。今回、後継者が少なくなってしまった正統派モーラムを受け継ぐ貴重な娘 弟子プロイとの来日公演。人間国宝となった彼女による伝統的なモーラムとポップスは見逃せない。
ポー・サラートノーイ PO CHALATNOI
1947年生まれ。ウボンラーチャターニー県出身の男性モーラム歌手。トーンカム・ペンディーに師事しアンカナーン・クンチ ャイと共にウボン・パタナー楽団で活躍。その色気のある喉は唯一無二の存在感を放つ。ケーン・ダーラオ亡き今、残された 最後の大物男性モーラム歌手として日々ライブ、後進の育成に取り組んでいる。今回アンカナーンと男女対での人間国宝モー ラム同士の掛け合いは要注目。今回待望の初来日。
ポンサポーン・ウパニ PONGSAPON UPANI
1991年生まれ。コンケーン県出身のケーン奏者。タイ若手ナンバーワンのケーン奏者として活躍。人間国宝であるチャウィー ワン・ダムヌーン、アンカナーン・クンチャイからの信頼も厚い。ケーンだけでなく、ピンや打楽器、そしてスタジオ・エン ジニアもこなすイサーンの新世代アーティスト。
Soi48(宇都木景一&高木紳介)
タイ音楽を主軸に世界各国の音楽を発掘・収集するユニット。MARK GERGIS(SUBLIME FREQUENCIES)、BRIAN SHIMKOVITZ(AWESOME TAPES FROM AFRICA)、MAFT SAI(PARADISE BANGKOK)との共演、東南アジアでのDJツアー、シングル盤再発や、EM Recordsタイ 作品の監修、16年秋公開予定、空族の新作映画「バンコクナイツ」音楽監修、『CDジャーナル』連載、モーラム歌手アンカナーン・ クン チャイの来日招聘、トークショーなどタイ音楽や旅の魅力を伝える活動を積極的に行っている。ユニット名と同じSoi48 という名前でトルコ、インド、パキ スタン、エジプト、レバノン、エチオピア・・・などのレコードがプレイされる世界でも 珍しいパーティーを新宿歌舞伎町にて開催している。
井手健介
1984年3月生まれ 宮崎県出身。東京・吉祥寺バウスシアターのスタッフとして爆音映画祭等の運営に関わる傍ら音楽活動を始 める。2012年より井手健介と母船のライヴ活動を開始、不定形バンドとして様々なミュージシャンと演奏を共にする。2014年 夏、バウスシアター解体後、1stアルバムのレコーディングを開始。また、井手健介と母船のほか、尾林星とのユニット "ホ セ&トンチャイ" 、ホセ&トンチャイのソロ "トンチャイ・K・ウィーラセタクン" としても活動。そのほか、墓場戯太郎、 ORCHESTRA、BARAMON、藤井邦博と砂、MARK with ラベンダーズ、等にも参加。
attc vs Koharu
ジャマイカ産のバージョン(B面インスト)の魅力を伝えるべく、ミニマルかつグルーヴィーな演奏に徹して現在に至る、 Amephone's attc。小唄・端唄界の最後のイノベーター、柳家小春師匠。カリビアン・シンコペーションと江戸風俗の軽やかな 遊びと。齟齬を隠さず、パラレルに進行するリズムの夢。ハイブリットという現実。乞う!ご期待。