WWW LOUNGEスペースのリニューアル記念パーティー「ground」開催!
静寂へと沈む都会の喧騒、RA年間ベスト・アルバム、PitchforkのBNRにも輝いた
鬼才DJ Sprinklesを迎えた"ディープ"な夏の宵を記録するサンデー・ハウス・ドキュメント!
国内外での展示や写真集の出版、音楽シーンではKOHH、THE NOVEMBERS、平井堅等の写真も手がけるなど多方面で活躍する一方、都内のライブ・ハウスやクラブで地下シーンを切り取り記録する気鋭の写真家/アーティスト、山谷 佑介のインスタレーション作品『ground』を冠した本パーティー。今回のゲストには90年代より音響/実験電子音楽の名門〈Mille Plateaux〉より数々の作品をリリース、その後2009年にDJ Sprinklesとしてリリースした、自身のルーツを物語る"ディープ"ハウスの名作『Midtown 120 Blues』(Mule Musiq) がResident Advisorで年間ベスト・アルバム、PitchforkではBest New Reissueに輝いた鬼才 Terre Thaemlitz (テーリ・テムリッツ) を迎え、Seiho主宰のパーティー[apostrophy]やLicaxxx、Madegg、石塚俊とのパーティー[Mal]のレジデントDJとして関西を拠点に絶賛活躍中のAspara、東京の電子音楽コレクティブ〈IN HA〉を先導するMari Sakuraiが登場。新世代の若手を交え、テーリ氏が語る"ハウスという情況"を記録し、夏の宵をしっとり彩るサンデー・アフターヌーンなドキュメント・パーティーが開催。
DJ Sprinkles『Midtown 120 Blues』
"ハウス・ミュージックは音と言うよりも情況です"
100枚以上のレコードの中にナレーターが「ハウスとは...?」って言うのを聞くかもしれない。答えはいつも安っぽいメッセージ・カードに書いてあるような「ライフ、ラブ、ハッピー」ばっかり...ハウスネーションはクラブが不幸から逃れるられるオアシスのように言うけど、不幸は私達と一緒にある。(もしあなたのファッション(格好)でクラブに入る事が出来たら良いんだけど、ニューヨークに住んでいた時のある出来事を思い出す。有名なロフトというクラブに入れてもらえなかったことがあった。まさに入口で入場を断られているその時、中から私のレコードがかかっているのが聞こえた。嘘じゃない。)
あなたが一時的に逃れようとした物が何か忘れないで。結局、ハウス・シーンができたのも、ここにあなたが来たのも、逃れたい何かにさせられたたことだから。ハウスは普遍的じゃない。ハウスは超限定的なもの。例えばイースト・ジャージー、イースト・ビレッジ、ウエスト・ビレッジ、ブルックリン...その場所だけでなっているサウンドとビートとか。当時のニューヨーク・ダンスフロア自体の音について言うと、今"クラシック"と呼ばれる曲がかかってるのを時々聞くけど、すべてのクラブでかけられていたほとんどの曲はクソなメジャーレーベルのボーカル曲ばっかりだった。他の人があなたになんて言ったかなんて知らない。その上、ニューヨークのディープ・ハウスはミニマル、ミドルテンポのインストルメンタルとして始まったと思うんだけど、レコード会社のディストリビュター達がもっと売れやすいボーカル・ハウスを要求し始め、そのうち〈Strictly Rhythm〉(「リズムだけ/ボーカル無し」の意味)というレーベルでさえ、ボーカルばっかりの曲を次から次へとリリースして自らの名前にさえ背いた。ヨーロッパの人のほとんどは、まだ"ディープ・ハウス"が下手クソで、ハイエナジーの、ヴォーカルありきの音楽だと思ってる。
それならばニューヨーク・ハウス・サウンドは何だったのか。ハウス・ミュージックは音と言うよりも情況だった。多くのDJ(自分のようなDJ)は名も無いクラブの名も無い人々、誰も聞かない、お金も払われないものだった。シルヴェスターの歌詞の中に「誰でもスターである」っていう言葉や「何も持っていない私」っていう言葉もあるけど、現実は後の方。
20年経って、メージャー・ディストリビューションは私たちに"クラシック・ハウス"と与えてきた。ハリウッドが作ったベトナム戦争の映画のサウンド・トラックから"クラシック・ロック"を与えたのと同じ方法で...ディープ・ハウスが出現した背景が忘れられていく:セックスとジェンダーのアイデンティティー崩壊、トランズジェンダー娼婦、闇ホルモン剤市場、麻薬とアルコール中毒、孤独、人種差別、HIV、ACT-UP(エイズ解放連合)、トンキンズ・スクエアー公園の暴動、警察の蛮行、ゲイ・バッシング、低賃金、失業、検閲...すべて毎分120のテンポで。
これがミッドタウン120ブルーズです。
テーリ・テムリッツ『Midtown 120 Blues』より
山谷佑介『ground』
自分自身が10代の頃から変わらずに遊び場としている都内のライブ・ハウスやクラブで制作したシリーズです。事前に撮ったその場所のフロアの床の写真を原寸になるよう大判でプリントし、実際にイベントが行われている間、そのフロアにゲリラ的に貼り、音の鳴り始めから音の鳴り止むまでの間の人々を記録した作品です。光の化学反応を用いないインクジェットプリントでは、その表層は靴底で削られ、インクはアルコールや汗で溶け、写真は現実ではなく"紙"という虚構が暴露されてしまいますが、踏みつけるという人々の参加により、より確かな実像を定着させています。薄暗いフロアの人々の足下で、刻一刻と変化していく表層の様は、暗室での現像作業に似ています。情報・場所・関係が本来持つ重みを失い、全てが画一的になりがちなこの時代の中で、未だストリートやアンダーグラウンドに残る混沌や生の匂いを切り取り記録することが、私の仕事だと考えています。
DJ Sprinkles a.k.a. Terre Thaemlitz
1990年、「DJ Sprinkles」という名で、ニューヨークのトランスセクシュアル系クラブで活躍したアンダーグラウンド・グラミー受賞DJ。その後、1993年にコマトンズ・レコーディングスを創設し、珍しいディープハウス/アンビエント/フュージョンのミックスから「ファッグジャズ風」を始めた。テムリッツのDJはハウスの過去と現在を結合している。2003年から2006まで、東京のクラブモジュール(渋谷)のレジデントDJ。そして今、ヨーロッパと日本の間を行き来している。DJスプリンクルズ名義でのファーストアルバム「Midtown 120 Blues」(Mule Musiqからリリース、ダンス・ミュージック・シーンで最も信頼度の高いインターネットメディア"Resident Advisor"にて、2009年のベストアルバムに選ばれた)と自作曲と自分で使う為のプライベート・リミックスもプレーします。
Aspara [MAL / Lomanchi]
金沢を拠点にDJとしての活動を始め、現在は大阪を拠点に活動中。Licaxxx、Madegg、グラフィックデザイナーの石塚俊と共に"MAL"を主催。
Mari Sakurai [IN HA]
エレクトロニック・ミュージック・コレクティヴ 〈IN HA〉のメンバーとして、不定期にイベントを開催。東京を拠点に活動中。
山谷 佑介
1985年新潟生まれ。立正大学文学部哲学科卒業後、外苑スタジオに勤務。その後、移住した長崎で出会った写真家・東松照明や無名 の写真家との交流を通して写真を学ぶ。2013年、自費出版した写真集『Tsugi no yoru e』が国内外で好評を得て即完売となる。近年で は京都国際写真祭への参加や、NYでの個展など活動の幅を広げている。写真集に『Tsugi no yoru e(2nd ver)』(YUKA TSURUNO GALLERY)、 『ground』(lemon books)がある。