ブルースのレクイエム、現代"エモ"のその先へ。Yves Tumorとのジョイント・ツアーでも話題のLAのミステリアス・ロックンローラーHirakishを迎え、speedy lee genesisが19ヶ月の歳月を経てNeoplasiaを再開。Minchanbaby、ALMA、DJ HONEYPANTS、1-DRINKがラインナップされた。2020年代のヒューマニティの鎖がここに現れる。
Neoplasia2が開幕です。
東京を暗躍するスタイリスティック・ビューティspeedy lee genesisが演出するオールナイト・クラブ・イベントが前回の開催から19ヶ月の歳月を掛けて準備された。
5月18日の5時間は、あなたにオルタナティブなブルースに覆い尽くされた特殊なクラブ体験をもたらします。エモが否定される、憂鬱なブルースのムード。
今回の目玉として、ニューオーリンズ出身LA在住のミステリアスアーティストHirakishが登場。ロンドンのエクスペリメンタル・レーベル〈Nyx Unchained〉から'18年にシングルをリリースしグローバルな音楽シーンに降り立ったHirakishは、先頃のYves Tumorとのジョイント・ツアーの評判を皮切りに、俄かにセンセーショナルな存在としてクローズ・アップされた。最新型のクラブ・サウンドが有機結合された2020年代モデルのブルース・マン、ロックンローラーだ。
チャックベリーの横たわる白く小綺麗な棺から漏れ出るマゴットブレイン、そんな風景を想像してください。Hirakishのライブ・パフォーマンスは私たちにとって特大のサプライズとなるでしょう。
日本からはラッパーのMinchanbabyに加え、Pink QueendomのメンバーALMAがライブパフォーマンスを披露。さらにDJ HONEYPANTSと1-DRINKがDJプレイを行う。そしてspeedy lee genesisは、オルタナティブ・クラブ・ブルースの特別なDJをセットする。
2回目のNeoplasiaは、存在のブルース性を起点にユニークなラインナップが揃った。現実世界をブルースに閉じ込めて、エモーションの先の地平に進みましょう。
Text by speedy lee genesis
- speedy lee genesisからのメッセージ
私は音楽にまつわるあらゆる状況の変化の中で、今ブルースというムードが切望されていることを感じている。
一部のアーティストの動向はエモーショナルなメロディの叙情性を超えて、根源的な「魂」や「逃れられない何か」を想起させる表現に移行し始めた。クラウドラッパーのトラックには #blues などとタグ付けされたものを見かけることも。しかしこれはヒップホップだけでなくあらゆる物事において起こっていることなのでは?
コレクトが無数に誕生して息苦しい。エモの消費がバブリーな状況でなお、全く渇望感が拭えない。トランプ大統領や安倍晋三首相に関心が集まる背景に横たわる疎外感、アメリカーナ的なるもの、上がれない貧困の中にいて、日本でも!ニュージーランドや相模原の憎悪殺人犯は自分の分身なのかもしれないと恐怖する。そして健全なコミュニケーションへの反動が溢れる。
私はそういった逃れられない重苦しさ、ブルースのような何かを頭の片隅に日々を過ごしているが、音楽がエモーション(エモ)のステートメントより上位の次元で、より切実な表現として存在して欲しいと強く願うようになってきている。そしてこの感情は私の個人的な体感を超え、多くの人の意識の中に存在するのではないか。私はそれをクラブシーンで表面化させてみたいという狙いを持ち、Neoplasia2を開くことにした。
開催にあたり、HirakishというアーティストをLAから招聘する。今回のNeoplasiaは、昨年の8月にドロップされた彼のシングルに入っていたLiquid Geezusという曲に触れ、受けた刺激からイベント自体の構想を練り始めた。
Liquid Geezusは、メタリックにクラッシュしたマシンリズムにレイジーなブルースギターをブレンドさせたバックトラックに加え、彼の声質に依存したその音像のドライさ、そして後半の、明確なビジョンを見据えた予言めいた展開に、言いようのない蠱惑を感じる'18年屈指の名曲だった。
ブルース性。わかりやすいモチーフになるが、彼がこういった哀感を秘めたブルース性なるもの(ブルース進行ではないが)を受け継ぎ、今だからこそ有効な方法によってファッショナブルにパフォームしたということに共感を感じている。
コンタクトを取っていく中で分かったことだが、これは決して偶然ではなく、Hirakish自身もブルースやロックンロール、ロックのフォームを使った音楽表現の効果に自覚的であり、センスオブワンダーな存在だ。
Neoplasia2で披露するライブではエディ・ヘイゼル(ファンカデリックの初代ギタリスト)の読み替え以上の、特別な現象が起こる気配がある。
Hirakishは実際にブルース的な音楽を制作し表現しているアーティストだが、今回のイベントはそういった音楽自体のジャンルというというよりも、切迫された雰囲気を極端に内包したアーティストを集めることで、あくまで現行のものとして投げてみたいという意図がある。国内のアーティストのキュレートはそれに基づいて行った。
Minchanbaby、ALMA、DJ HONEYPANTS。私は気質としてのブルース性を彼らから一方向的に読み取っているが、それぞれが複雑で現代的な感覚を持った出演者だ。ぜひ彼らの音楽にアクセスして欲しい。そしてマスター1-DRINKは私とともに、彼らを繋ぎ止め、クラブ仕様のオルタナティブ・ブルースを機能させるナビゲーターとなる。
5月18日は予想を超える鎖状の何かが現出すると思う。楽しみにしていて。
Hirakish [LA]
ルイジアナ州ニューオーリンズ出身。現在はLAに在住。90年代にスケーター、ミュージシャンであった父親の影響でスケーター文化、音楽とビジュアルアートに触れる。音楽活動と並行してHirakish Ranasaki名義でファッションモデル、俳優としても活動。2017年の映画Good Timeにもクレジットされている。LAとニューオーリンズに拠点を置くDIYコレクティヴPINK ROOM PROJECTに所属しつつ音楽活動を本格化。2018年8月にロンドンのレーベルNyx Unchainedから、デビュー12インチシングルBlack Velvetをリリース。デヴィッド・ボウイや初期ファンカデリックから多大なインスピレーションを受けたこのシングルは一部で話題となり、2018年末にYves Tumorのワールドツアーにジョイントアクトとして招聘され、翌19年にかけて帯同する。2019年最大の注目を集めるアーティストの一人へ。2019年に某レコードレーベルよりリリースを控えるロックスター。
https://nyxunchained.bandcamp.com/album/black-velvet
Minchanbaby
2004年に某クルーを脱退し、ソロでの活動に戻る。
2007年に1stアルバム「after school makin' love」をリリース。
2008年終わりからネットでの楽曲発表を始め、これまでに多くのMIX TAPEや曲をリリース。
2012年に2ndアルバム「ミンちゃん」をリリース。
Minchanbabyに改名し、2017年に「たぶん絶対」をリリース。
2018年に2枚のEP「ひとりのテロリズム」「都会にまつわるエトセトラ」をリリース。
ALMA
東京を中心に活動。自身のジェンダーにまつわる物語をテーマとし、アイデンティティに関する問いかけをする。その音たちは、イマジナリーな私/リアルな私...境界線の無いゆるやかな波間でたゆたう。また、クィア・コレクティヴ「Pink Queendom」の運営に携わっている。
DJ HONEYPANTS
ロマンティック、ゴージャス、ドラマティックそしてアウターナショナルに選曲。Romantic, Gorgeous, Dramatic, plus a hint of Outernational.
https://m.soundcloud.com/djhoneypants
1-DRINK
ダンスミュージックの境界を彷徨いながらDJ活動している。
https://soundcloud.com/1-drink
speedy lee genesis [Neoplasia]
speedy lee genesisはフレッシュな様式美を捉えるDJです。メインパーティーはNeoplasia(東京)です。
https://soundcloud.com/slgene/ethmix