再生産され続ける電子音楽の系譜から、濾過され、煌めきを帯びた確かなる鼓動。
渋谷WWWβを舞台にしてローンチされる〈The Line Sifting to Dots〉は、信念あるキュレーショニズムを基にして、幾つかのジャンルを横断することで強固になるコンセプチュアルな身体体験の復旧を掲げて創り出される。止むことのないビートの繰り返しを前提とするダンスミュージックに、あとどれだけの静寂性が残されているのだろうか。本イベントでは、変則的なリズムテクニックによるグルーヴ、制約を超えて自由にスケッチされた音像、心身に深く作用する緊張感のある原始的なサウンドを組み合わせて、どのようなエネルギーが創造されるのか、3人のゲストアーティストと信頼できるサウンドオペレーターと共に、音響工作のセッションを行う。
イベントの中心には、オーストラリア・メルボルンを拠点として、幾つかの実験的な作品をリリースしてきたThird Spaceがライブアクトとして迎えられる。同地域の電子音楽シーンから異彩を放ったリリースを続けるレーベル〈Absorb〉から発表された新譜"dot points"は、新しいフォームのダンスミュージックとも称せるほどの完成度で、彼の唸るベースを基盤としたビートミュージックとネオ・クラシカルにも繋がる歪められたサウンドが絡み合うライブセットは、現行シーンにおけるダンスミュージックの新しい可能性を拓いてくれるだろう。併せて、現在は英国・ロンドンを拠点にして、シーン最前線のプロモーターから厚い支持を集めているモダン・ドラムンベースの旗手Lynneが、彼女の最も得意とするグレーエリア中心のアブストラクトD&Bセットをロングセットで披露。また富山の地から〈Refuge〉と名付けられたイベントを主宰し、北陸に根付く特異なサイケデリックシーンを支え続けてきたAPEPAには、既存の枠組みから外れた、あらゆるジャンルの狭間を往き交うセットをオーダーしている。
テクノやD&B、ダブやIDMといった無数の音楽ジャンルを速度から解体し、複合的なレイヤーから再構築される一晩の物語を心待ちにしてほしい。