まもなく6年半ぶりに再び日本を訪れるエルメート・パスコアール。「枯れない泉」という表現のとおり、今なお日によっては5曲、多い日はそれを越える楽曲を生み出し続けている真の音楽の探求者である。そんな彼が、80歳にして今なお音楽と向き合い続ける「精神の源」についての我々の問いかけに、今回特別にインタビューという形で答えてくれた。
さらに今回、エルメートとともに演奏する5人の弟子たちが、師匠との始めての出会い、共演のなかで学び大きな影響を受けたこと、各々がその精神を受け継ぎ推し進める個々のプロジェクトについて、そして1月の来日に向けて各々が想いを寄せる日本、とオーディエンスへ向けて語って貰った。
「私を動かすものは、慎ましやかな音楽の精神です(エルメート・パスコアール)」
エルメートさん、80歳の誕生日おめでとうございます!再来日を私たちも待ち望んでいました。あなたのように、80歳になった今も現役で世界中をツアーをしているような人は数少ないと思います。一体、何があなたをそうさせているのでしょうか?
私を動かすものは、慎ましやかな音楽の精神です。それは常に私とともにあり、大地と共に生まれ、その大地に音楽が生まれた。この世界は私を愛してくれています。私もこの世界を愛しています。私は音楽と共に生まれたのです。
80歳の誕生日はいかがでしたか?
ブラジル各地で祝ってもらい、非常に素晴らしいものでした。誕生日を祝うコンサートは、ここジャブーでファビオ・パスコアルと共に始まり、各地に広がりました。
いつも深い敬意を払われているのを感じましたし、コンサートの15日前に、会場が満席であることを知らされることもありました。
誕生日を記念して銅像が作られたとか。自身の銅像をみた感想はいかがでしたか?
偉大なクレーシオ・ヘジスが作った銅像だから勿論気に入りましたよ。ただ本物の方ほうがもっとハンサムです(笑)
80歳を記念してヨーロッパツアーも行いましたがいかがでしたか?
ヨーロッパでも全てがすばらしかったです。常々話しているように、この世の中に違いは存在しません。私たちは皆似たもの同士であり、私の音楽は人々が同胞であることを示すユニヴァーサルな音楽です。
過去に1979年、2002年、2004年、2010年と日本を訪れましたが、この国の印象はいかがですか?
いつも子どもたちや友人、出会う全ての人たちに話しているのですが、日本は私にとって地球の中の「空」の一つであると。すばらしい人々が生活していて、日本人は感動的な人々だということです。
日本ではお腹の出た人が好まれてますね。若い女の子たちが、私のお腹に手を当ててきた時に「ああ、我が愛しいお腹よ!」と言われました。日本の女性のみなさん、ありがとう(笑)
では、新しいメンバーたちと編成した現在のグルーポについて教えてください。
ジョアン・パウロは偉大な音楽家であり、すばらしい人物です。時を重ねて生まれきたものがあります。彼は10点満点の最高のミュージシャンだと思っています。
1月のコンサートはどのようなものになるでしょうか?
一つだけ言いましょう。何が起きるかはわからないということです。私だけが知っています!!!お楽しみに。
最後に日本のファンへメッセージを一言お願いします。
大切な日本のみなさん、日本を愛しています。みなさんへ大きな郷愁と共に心からの抱擁を送ります。再びグループと共に日本に戻れることを光栄に思っています。今回長年のみなさんへの郷愁の思いを打ち破り、さらに演奏を重ね、新しいものを携えて私たちの美しいグループと共に来日します。日本の皆さんに一言メッセージを送ります。"さらなるパン(栄光)を!"ここブラジルではこんな冗談を言います。"もう・・・パン、パン・・・もう・・・"
※ポルトガル語でJapãoは、Já(もうすでに)、pão(食べ物のパン)と言う意味。
【エルメートの即興の歌】"日本人は素敵な人々、理由もなく話さない・・・ユニヴァーサルな音楽や湖の音楽を愛する・・・日本のみなさんへあの抱擁を、あなたたちは勇敢な人々、万歳、日本の人々、そして親愛なる私のノルデスチ(北東部地方)・・・"
今回の来日を記念して、着心地最高のオーガニックコットン素材でTシャツを作りました。
会場限定で、販売。1枚6000円、2枚で11,000円。サイズは、S、M、L
「音楽家として、全ての人々に音楽を広めるのが私たちの使命 ーイチベレー・ヅァルギ(ベース、パーカッション)」
巨匠エルメート・パスコアルとの最初の出会いは?
イチベレー・ヅァルギ:以下I)エルメートと最初に会ったのは1966年、当時私が住んでいたサンパウロででした。当時私は「Xangô Trio」で演奏をしていて、午後にリハーサルをしていたのですが、ある日、ちょうどリハーサルがなく「Canja」というジャズクラブで演奏するために、一緒にプレイしてくれる人を探していました。そこで出会ったのがエルメート・パスコアルだったのです。
私はベースを演奏し、エルメートはそのジャズクラブでピアノを演奏していました。
そのとき、私たちはドラマーと3人でジョニー・アルフの「Céu e mar」を演奏しました。16歳の私にとって、彼との共演はお祭りのような体験でした
長年エルメート・グループで演奏して来ましたが、あなたはどのようなことを感じ、どのようなことをエルメートから学んできたと思いますか?
I:私は1977年からずっとエルメートと仕事のパートナーとして過ごして来ました。長い間、彼の「ユニヴァーサル・ミュージックの学校」で、音楽そして人生について学び、現在も学び続けています。
音楽と人生は私の中で一つのものです。さらにイチベレー・オルケストラ・ファミリアやイチベレー・グループといったグループを率いて、可能なレベルまで成長することができました。
私はグループ・リーダーであり、作・編曲家でもあり、演奏者です。つまり、イチベレー・ヅァルギによるユニヴァーサルミュージックが私が学んできたことの全てです。
これら全てを通し私は独自の演奏、作・編曲、つまり常に創造するスタイルを築き上げることができました。
エルメート・パスコアルグループ以外での活動について教えてください。
I:キャリアの中であるとき分岐点がありました。エルメートが私の指揮の下「自身の仕事を行うべき成熟期が来た」と言ってくれました。音楽家として、全ての人々に音楽を広めるのが私たちの使命だと。
そこでイチベレー・オルケストラ・ファミリアを結成し(2001年にJan Musicから「Pedra do Espia」、2005年に自主制作で「Calendário do Som」、2009年にFunarteより「Contrastes」、日本盤をNature Blissからリリースし、そして2012年にDeliraよりイチベレー・ヅァルギグループとして「Identidade」、2014年にDeliraより「Na tela da Imaginação」のDVDをリリースしました。
2016年にBiscoito Finoから「Universal Music Orquestra Itiberê Zwarg & Umo feat Hermeto Pascoal」がリリースされます。この作品は、私たちがエルメートの80歳と彼との共演40周年、またフィンランドのオーケストラの設立40周年を記念して制作しました。
私はアコースティック、エレキベースの演奏の他、11曲を作曲、12曲を編曲しました。
最後に日本のファンに一言お願いします。
I:日本での演奏は、1月の公演で4度目になります。演奏するとき常に日本のみなさんから私たちの芸術への最大限の敬意を感じますし、それは人々の感性のレベルの高さを物語っています。
あとみなさんに強調して言いたいことは、この感情は相互的なものだということです。私たちは互いに尊敬し合っていて、私もみなさんのために演奏したいという思いに満ちています。
あとユニヴァーサルミュージックをお届けするためのワークショップを可能であればやらせていただきたいと思っています。1月に会いましょう。抱擁を!
※後日、イチベレー・ヅァルギ氏によるワークショップがエルメート・パスコアルグループコンサート後の3日間実施されることが決定しました。
https://www.facebook.com/events/539871946211465/
「私の人生は疑いなくエルメートに出会う以前か以後に分けられるーアンドレー・マルケス(ピアノ、フルート、パーカッション)」
あなたとエルメートとの出会いを教えてください。
アンドレー・マルケス以下:A)私の巨匠との出会いは、サックス奏者故ヴィニシウス・ドリンを介してで、彼が私をグループの所へ連れて行ってくれました。そこで一週間リハーサルをし、その後エルメートは私をグループの正式メンバーとして迎えてくれました。それは人生で最も重要で感動的な瞬間の一つでした。
あなたはいつからエルメートと演奏をしているのですか。演奏を通してどのようなことを学び感じてきましたか?
A:エルメートとは1994年、18歳のときから演奏しています。彼のグループで演奏することは一つの美しい音楽一家の一員になるようなものです。私はそれを「私の大学」と呼んでいます。グループに入って音楽に対する視点が根本的に変わりました。私の人生は疑いなくエルメートに出会う以前か以後に分けることができます。
エルメートは師匠であり、友人、そして私が知る限り最も情の深い人です。彼は人として音楽そのものであり、常に知っていることを喜んで教えてくれます。彼は決して誰にも隠し事はしません。
エルメート・パスコアル・グループ以外でのあなたの活動について教えてください。
A:エルメートのグループの他に、自身のグループを率いています。一番古く、今年で結成20年になるのがTrio Curupiraです。それ以外にも、21人の音楽家によるa Vintena Brasileiraがあり、そこで私は指揮、作・編曲を行っています。
また、私は自身の名を冠したAndré Marques Sextetoを率いて、現在3枚目のCDの録音に取りかかっています。私の最近の仕事はエルメートにオマージュを捧げるプロジェクトで、「Viva Hermeto」というものです。2014年にアメリカでCDをジョン・パティトゥッチ、ブライアン・ブレイドとのトリオで録音しました。この構想は、国際的に高名な音楽家で巨匠エルメートの音楽との接点がなかった彼らを「カンペァオン」(エルメートのニックネーム。チャンピオンの意)の信じられない音楽とは違った音で表現するというものです。
最後に日本のファンに一言お願いします。
A:今回が日本への3度目の旅になります。毎回素晴らしく、日本の人々から多くのパワーをもらっています。私はとても楽しみにしています。"みなさん、楽しみましょう!"
「巨匠に対する敬意や賞賛を表す言葉は見当たりませんーJOTA P(サックス、フルート)」
あなたと巨匠エルメート・パスコアルとの出会いを教えてください。
ジョアン・パウロ以下J)14歳のときに初めてエルメート・グループを聴きました。彼らがクリチバの町で行ったコンサートのヴィデオです。メンバーはエルメート、イチベレー、マルシオ、アンドレー、そしてヴィニシウスでした。個人的にエルメートと出会うのは、その後、私が観に行ったライブでヴィニシウスの招きで楽屋に行った時のことです。
その時から現在まで、ヴィニシウスはいつもコンサートの度に私に共演できるよう声をかけてくれました。2014年の9月にカンピーナスの町のコンサートでビッグバンドと共にエルメートと演奏しました。2015年7月にヴィニシウス・ドリンが病気になった時、彼は私を指名し、グループのメンバーたちは私をベロ・オリゾンチのUFMGの冬の祭典のコンサートに呼んでくれました。
あなたはヴィニシス・ドリンの後グループの正式メンバーになりました。彼はグループについてどう言っていましたか?
J:私はいつもコンサートを観に行っていましたし、ヴィニシウスは私の親友でした。
2007年にヴィニシウスは私に「グループに替わりのメンバーが必要な時はエルメートに私を推薦する」と言いました。ヴィニシウスはグループを愛していましたし、いつも彼は私に旅の話やコンサートの話、エルメートとの交流について話をしてくれました。
エルメート・パスコアルについてきかせてください。
J:私の彼の音楽やこの巨匠に対する敬意や賞賛を表す言葉は見当たりません。
エルメート・パスコアルグループ以外でのあなたの活動について教えてください。
J:私は自己のグループを率いています。そのグループで私は作・編曲、音楽的な監督や指揮も行いますし、サックスとフルートを吹きます。グループのメンバーは、セルジオ・コエーリョ(トロンボーン)、ファビオ・ゴウヴェア(エレクトリック、アコースティックギター)、ブルーノ・ミゴット(ベース)、パウロ・アルメイダ(ドラム)です。そして二枚のCDを発表しています。詳しくはYoutubeをご覧ください。
現在、B.R.A.S.I.L.の仕事でチアゴ・エスピリット・サントと、Remistura7ではジアン・コヘアと、ルイージ・ウーレイキンテットのRessonâncias、アレグレ・コヘアグループ、ヘテテービッグバンド、エントレヴェーロ・インストゥルメンタル、フィロー・マシャード、マルコ・ロボ、エドゥアルド・ベローニなどと仕事をしています。
最後に日本のファンに一言お願いします。
J:私は日本の人々や文化に深い敬意を持っています。日本でみなさんにお会いし、演奏ができることが楽しみでなりません!
「このグループは世界で最高の音楽家たちの集うグループの一つ ーファビオ・パスコアル(パーカッション)」
まず、どのようにして、あなたがエルメート・パスコアル・グループに入ったのか教えてください
ファビオ・パスコアル:以下F)1989年にグループに入り、シルコ・ヴォアドールでデビューしました。
当時大学を卒業するのに残り半年という時でしたが、音楽家になる「最後の試験」が来たと直感したので、エルメートのところに行き「グループに入って演奏がしたい」と直訴しました。ちょうどエルメートは、(前任のパーカッショニスト)ペルナンブーコが楽譜を読めなかったので、編曲のために楽譜を読める音楽家を探していたのです。
エルメート・パスコアルは、あなたの父として、音楽家としてどのような存在なのでしょうか?
F:父として最高の友人であり、音楽家としてはユニヴァーサルミュージックの生きた天才です。
腕のエルメートのタトゥーについて詳しく教えてください。
F:このタトゥーは音楽家、そして天才エルメート・パスコアルに敬意を表して刻むことにしました。父は私の心の中に常に刻まれているからです。
このグループで演奏するということについて感じていることは?
F:このグループは世界で最高の音楽家たちの集うグループの一つです。エルメート・パスコアルの指揮の下この仕事に携わることができることは最高の体験です。
エルメート・パスコアル・グループ以外でのあなたの活動については?
F:グループの他に。インストゥルメンタルミュージックのつながりの中で何人かの音楽家と活動しています。
私自身は、「広場の音」というジャブーの町の広場で、子どもたち向けにインストゥルメンタル・ミュージックのプロジェクトや彼らの芸術を通した活動を行っています。
絵の具や段ボールを子どもたちに配布し、彼らが聴く音楽によって大きく、美しい音楽が生まれていきます。このプロジェクトでは、ヴァイオリン、横笛、フルート、打楽器の授業が完全無料で行われています。私たちは財政的な援助をしてくれる人や、プロジェクトの楽器を提供してくれる人々の支援を募っています。
最後に日本のファンに一言お願いします。
F:日本のみなさんはいつもコンサートの度に会場を満席にしてくれます。あなた方のエネルギーは美しく、早く出会えることを楽しみにしています。みなさんに最高の抱擁を。それではまた!
「エルメートとの一瞬一瞬から新しいことを学んでいます ーアジュリナン・ヅァルギ(ドラム、パーカッション)」
あなたと巨匠エルメート・パスコアル氏との出会いを教えてください。
アジュリナン・ヅァルギ以下:AZ)エルメートとの出会いは生まれた時からです。私の父イチベレーは1977年からエルメートと演奏を共にしてきました。私は1983年生まれで、子どもの時からエルメートのグループに同行し、現在このグループの一員であることを誇りに思っています。
あなたは長年グループのドラマーであったマルシオ・バイーア氏の後に正式なドラマーとなりました。グループのメンバーとしてどのようなことを感じ、学んできましたか。
AZ:私はマルシオ・バイーアがコンサートに参加できなかった時に替わりに7年間エルメートと共に演奏していました。2年前に正式なグループのドラマーになりました。エルメートとの一瞬一瞬から新しいことを学んでいます。私にとって音楽への偉大な力と献身は彼から学んできた一番大きなことの一つです。
エルメートについてきかせてください。
AZ:飾らない人、天才、愛情の深い人、戦士、純粋でユニヴァーサルな音楽。
エルメート・パスコアルグループ以外でのあなたの活動について教えてください。
AZ:私はイチベレー・ヅァルギ・グループのドラマーでもあり、また様々な偉大な音楽家と共演しています。カルロス・マルタ、ニコラス・クラシーキ、アリスマール・ド・エスピリート・サント、ジョヴィーノ・サントス・ネットたちです。私はある社会プロジェクトのドラムの教師でもあります。そこは危険な場所で音楽が大いに求められています。そして私はイチベレー・ヅァルギのグループとワークショップのプロデュースも担っています。
最後に日本のファンに一言お願いします。
AZ:ブラジルの音楽は日本の人々に大変リスペクトされています。エルメートと共に日本で私の初めてのコンサートができることを心から誇らしく思っています。巨匠が持つエネルギーを観客の人々と分かち合えることを楽しみにしています。
インタビュー・翻訳(2016年9月):青木義道
構成:FRUE & Hideki Hayasaka
FRUE ~Brasil Universo~ feat. Hermeto Pascoal e Grupo at WWW X
2017/1/7(sat)
-1st set
open 16:00 / start 17:00adv 8,500 yen (ドリンク代別/全自由席/270席) SOLD OUT!!
-2nd set
open 19:15 / start 20:00adv 8,500 yen(ドリンク代別/全自由席/270席) SOLD OUT!!
http://www-shibuya.jp/schedule/007005.php
2017/1/8(sun)
-1st set
open 16:00 / start 17:00
adv 7,000yen / door 8,000yen(ドリンク代別/オールスタンディング)
-2nd set
open 19:15 / start 20:00
adv 7,000yen / door 8,000yen(ドリンク代別/オールスタンディング)
http://www-shibuya.jp/schedule/007006.php
Ticket : https://frue.shop-pro.jp/
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