今年で活動10周年を迎える蓮沼執太が、来る9月6日、その集大成となる大規模な公演をWWW Xにて開催する。ゲストには蓮沼執太フィルの仲間たちやこれまでプロデュースを行ったアーティストなど、ジャンルを超えた多彩なメンバーが一同に会するようだ。果たしてどんな一夜になるのか。ライブや楽曲制作で幾度も共演を重ね、10年の活動を至近距離で見てきたタブラ奏者のU-zhaanが、公演を目前に控えた蓮沼に見どころを尋ねた。
ユザーン(以下、ユ) 活動10周年記念公演って書いてあるね。具体的には何からの10年を記念してるの?
蓮沼執太(以下、蓮) アメリカの「Western Vinyl」ってレーベルから初めてのアルバムを出したんだけど、そのリリースから10年なの。
ユ:執太ぐらいになると、やっぱりデビューはアメリカなんだね。
蓮:うるさいよ(笑)。
ユ:イベントのタイトル(「蓮沼 X 執太」)、読み方は「ハスヌマ テン シュウタ」でいいのかな。
蓮:うん、それで合ってるね。
ユ:ローマ数字で10を表すXと、会場のWWW Xを掛けてるのかね。執太が考えたの?
蓮:タイトルをインターネットで公募したんだよ。公募というか、投票だな。5つぐらいの候補を主催者と一緒に作って、票が一番集まったのを選んで。
ユ:他にはどんなのがあったの?
蓮:「蓮沼総執太」とか。
ユ:蓮沼執太の総集編、ってことか。そっちのほうがいいね。それにしなよ。
蓮:もう決定しちゃったんだって。あとは「はすぬまつり」ってのもあったな。
ユ:全部ひらがなで「はすぬまつり」? それもちょっとダサかわいい感じでいいねえ。ていうかさ、「はすぬまつり」にしとけば同じタイトルのイベントを毎年開催できるよ。「テン シュウタ」だと、今年しか使えないじゃん。
蓮:たしかに...。なんでもっと前に言ってくれないの。
ユ:今からでも遅くないよ。「投票では "蓮沼 X 執太" が一番人気でしたが、ここは思い切って "はすぬまつり" で行きたいと思います」って声明文を出してさ。
蓮:なんのための投票だったんだ、って苦情が来ちゃうよ。
ユ:強い気持ちを持っていれば、きっと炎上も乗り切れるって。
蓮:そんなクレーム処理へ神経を使うより、イベントの内容に集中したいよね。
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ユ:そりゃそうだね。今回はどんなイベントになる予定なのかな。出演者が多いね! ドラマーだけで3人もいるよ。3人が一緒に叩く瞬間もあるの?
蓮:それはないんだなぁ。蓮沼執太フィルのメンバーとしてイトケンさんとJimanicaが出演して、千住宗臣くんには『メロディーズ』のアルバム曲を演奏してもらう予定で。
ユ:フィルもやるんだ。いいねー。坂本美雨ちゃんや環ROY、ZOMBIE-CHANGの名前もあるよ。
蓮:3人に、それぞれ新曲を書いてるんだよね。それも披露することになってる。
ユ:みんな出てくれてよかったね。人望だな。
蓮:本当にありがたいですよ。でも、なぜかユザーンの名前がないけど。来てくれないの?
ユ:ちょっと忙しいんだって。こんな謎のプロモーション対談を引き受けてる時点であんまり説得力がないけど(笑)。ところでさ、執太は初期のころ電子音楽のインストを中心に作ってたじゃない。俺、あのころの作品も好きなんだよね。集大成みたいなイベントだし、そういうのもやったらいいんじゃないかな。
蓮:エレクトロニカのトラックみたいな形ではないけど、開場してから開演の時間までモジュラーシンセを使ってひとりで電子音楽の即興をやろうかと思っていて。
ユ:そうなんだ! じゃあ来られる人はなるべく早く行ったほうがいいな。即興音楽も執太を形作る要素の大きなひとつだよね。楽曲の制作でも、即興的な部分をとても大事にしている印象があるし。偶然から生まれたものも含めて、音楽にしていくというか。
蓮:そうだね。特に最近はそういうところが多いかな。
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ユ:前は違ったの?
蓮:最初はやっぱり、ひとりっきりで作ってたからさ。家で打ち込みの作業をするのと、みんなでライブをやるのって全然違うもんね。いろいろな人と作っていくことで学んでいったことなのかも知れない。
ユ:なるほどね。たしかに、初期の作品よりも近作のほうが風通しのいい音楽になっている感じを受けるかも。そうやって少しずつ変わっていくんだろうな。今回のイベントでも、何か今までに見せたことのない執太の一面を提示できるといいよね。
蓮:タブラとか練習しておいたほうがいいかな。
ユ:それもいいけど、体を鍛えておいたら? 腕立て伏せとかして。
蓮:なんで?
ユ:アンコールに、上半身裸で出てきたらおもしろいじゃん。脱いだらムキムキでさ。みんな「執太、仕上げてきたな〜」って思うはずだよ。
蓮:みんな、そんなの見たいかな。
ユ:絶対見たいって。それがあるなら、俺も全ての予定を空けて会場に駆けつけるよ。アンコールの拍手の中、ペットボトルの水を被りながら半裸で出てきて「今日は俺のために集まってくれてみんな本当にありがとう!!」って叫んだらめちゃくちゃ盛り上がると思うよ。
蓮:考えとくわ...。
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ユ:Tシャツを突然脱いで、客席に投げつけるのもいいね。今回、物販用の新作Tシャツも準備してるんでしょ。
蓮:うん、いまユザーンに着てもらってるやつがそうだよ。着心地はどう?
ユ:いいTシャツって感じがするね。
蓮:極めて普通な返答だね。
ユ:ちょっといい生地を使ってる、肌触りのいいTシャツ。でも、このキャップのほうは少しサイズが小さいんじゃない? 頭が入りきらないよ。
蓮:それは髪型に問題があるんじゃないかな(笑)。
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蓮沼執太
1983年、東京都生まれ。映画、演劇、ダンス、音楽プロデュースなどへの作曲、領域横断的なコラボレーションを多数展開している。また作曲という手法を様々なメディアに応用し、映像、サウンド、立体、インスタレーションを発表し、個展形式での展覧会やプロジェクトを活発に行う。2006年にアメリカのレーベルWestern Vinylからのデビュー・アルバムを発売。国内レーベル「PROGRESSIVE FOrM」、「HEADZ」から『POP OOGA』『wannapunch!』『CC OO』など数多いアルバムをリリース。2010年には14人編成のアンサンブル「蓮沼執太フィル」を結成し、2014年に『時が奏でる|Time plays - and so do we.』を発売し、全国ツアーを行う。2016年にはヴォーカル・アルバム『メロディーズ』をリリース。9月27日より南青山スパイラル・ガーデンにて個展『作曲的|compositions - rhythm』を開催。
http://www.shutahasunuma.com/
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U-zhaan(ユザーン)
1977年、埼玉県川越市生まれ。ザキール・フセイン、オニンド・チャタルジーの両氏からインドの打楽器「タブラ」を師事。'00年よりASA-CHANG&巡礼に加入し、『花』『影の無いヒト』など4枚のアルバムを発表。'10年に同ユニットを脱退後、U-zhaan × rei harakamiとして「川越ランデヴー」「ミスターモーニングナイト」等を自らのサイトから配信リリース。'14年には坂本龍一、Cornelius、ハナレグミ等をゲストに迎えたソロ名義のアルバム『Tabla Rock Mountain』をリリースした。'15年、Ryuichi Sakamoto + U-zhaanとして「Tibetan Dance / Asience」を7inchレコードで発表。'16年には映画『マンガをはみ出した男 赤塚不二夫』の音楽をU-zhaan + Shuta Hasunumaで担当し、ボーカルにタモリをフィーチャリングした主題歌が話題となった。
インドからのツイッターでのつぶやきをまとめた書籍『ムンバイなう。』を'10年に出版し、のちに続編『ムンバイなう。2』も刊行されている。
http://u-zhaan.com